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「非現実的な夢想家」

作家・村上春樹氏による授賞式でのスピーチが、私も言いたかった事を随分代弁してくれていたので(笑)紹介します。

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文()()/毎日新聞サイト内

私も村上氏の言う「非現実的な夢想家」のままでいてもいいかなという気になってきました。
…残念ながら、氏の本を手に取った事はありませんが。(^^;


子供の頃に旅行した事がある広島。その平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑に刻まれた鎮魂の句。
「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」
私たちは、約束を破ってしまいました。誓いを忘れてしまいました。
欲、保身、無知、諦め、そして忘却によって、ヒロシマとナガサキの犠牲者の「叫び」を歳月の彼方に押しやってしまいました。
軍拡・核開発競争など「抑止力の拮抗による平和」が語られた冷戦時代、そして「核の平和利用」というアイゼンハワーの美辞麗句。
世界唯一の被爆国である役目を忘れ、核保有国の論理に膝を屈し、その果実を甘受してきた結果。
「フクシマ」という「第三の被曝」によって、日本は再び原子力と真正面から向き合わざるを得なくなりました。

原子力技術を全て否定するつもりはありません。例えば、癌の放射線治療なども立派な原子力技術の一環です。
患部周辺の正常細胞をなるべく傷つけないピンポイント照射が可能になった事によって、以前より副作用が軽減されたのも技術の進歩と言えるでしょう。
ですが、原子力技術――核エネルギーを生み出す根幹となるのは、天然に存在するウランを燃料とした核融合或いは核分裂。
本来なら安定している自然物をわざと不安定にさせて生み出される力…つまり「制御された暴走」下のエネルギーと言えます。
しかし、本当に「制御された暴走」などありえるのでしょうか?
人間は科学技術の発展により、自然災害からのダメージを軽減し、生存圏を広げてきました。
それでも、自然を完全にコントロールする事など未だに出来ていません。
天気予報は100%当たる訳もなく、竜巻や台風を消せる訳でも、津波や洪水を止められる訳でも、地震を完全に予知出来る訳でもありません。
いわば、地球に「間借り」しているちっぽけな人類、ことに「天災国」ともいえる日本人は自然への畏敬の念を持って生きてきた筈です。
しかし、果たして日本人は「原子力」という「自然を超えた」力に、真摯に向き合ってきたのでしょうか?
功も罪も併せた事実を直視する真摯さが失われたまま、日本は「原子力」とそれを扱う「組織」の暴走をとうとう許してしまいました。
一度暴走させたものを容易に鎮める事は出来ない。
原発という蒼褪めた馬でロデオを楽しんでいるうちに、とうとう手綱を締められなくなり、振り落とされたような格好に見えてなりません。

過ちと知っていても繰り返すのが人間の性(さが)。
ですが、過ちを知って学ぶ事が出来るのもまた人間の性質。
目先の利益に目が眩んで、自分やその子孫の「未来」を売り渡す事もしてきた人類。
この「負の連鎖」から抜け出す最後の機会が、まさに「今」ではないかと思えてなりません。

心に夢を、眼に現実を、言葉に真実(まこと)を、その手に愛を。