その試験1号機が、発射直前に突然打ち上げ中止となりました。
メインエンジン点火後、異常を検知したシステムが補助プースター「SRB-3」への着火信号を送出しなかった事が原因であったとJAXAは発表しました。
日本の宇宙ビジネスの将来を担う機体だっただけに、関係者や見守ったファンの落胆は大きかった事と思います。
この打ち上げ延期に対して、JAXAの記者会見で共同通信社の記者がした「質問」が物議を醸しているようです。
打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは|IT media NEWS 2023.2.17
新型ロケット「H3」打ち上げ失敗、三菱重株は一時マイナス圏に|Bloomberg 2023.2.17
そもそも、何をもって「失敗」とするのかも定義せずに話してる時点で、答えなど出るはずもありません。
共同通信記者の発言は、まるで「質問」の振りをした、ただの「野次」のようです。
2022年10月12日に打ち上げ直後の姿勢異常から軌道投入に失敗し、指令破壊されたイプシロン6号機(※IHIエアロスペース製)は機体も搭載された衛星も失いました。
姿勢制御の失敗、ロケットおよび人工衛星の軌道投入の失敗など、イプシロン6号機は「打ち上げに失敗した」と言って差し支えないでしょう。
軌道投入に失敗したイプシロン6号機、原因はダイヤフラムの吸着|日経Xthec 2023.2.15
しかし、H3は制御システムが機体の異常を正しく検知した(※詳しい原因究明は今後の課題)結果、機体も搭載衛星も失わずに済みました。
様々なトラブルによる打ち上げ延期が続いており、今回も予定通りに打ち上げられなかった事は関係者の方々にとって、とても残念だったでしょう。
それでも、新しい事に挑むとはそう云う事です。
「新しい事」には「前例が無い」訳ですから、「何が起こるかわからない」もとい「何が起きても不思議では無い」筈です。「新しい」筈なのに「前例」があったら、それはただのパクリもとい盗用です。
H3は、前世代のH2Aよりも部品点数・機体・燃費・コストの縮小を目標した「新型機」。
そこには、エンジニアの想定を超えた魔が潜む。
何より、スケジュールや予算を守る事に執着し過ぎて技術的欠陥を見逃してしまうと、大事故に繋がりかねません。
米ソ宇宙開発競争時代、ソ連は党の記念日に打ち上げを成功させる事に固執した結果、ソユーズI号の墜落事故やニェジェーリンの大惨事を引き起こしています。
そもそも、日本の宇宙ロケットの打ち上げ成功率は98%。世界1位です。(※2001-2016年比較)
2020年7月20日にH-2Aロケット(※三菱重工製)がアラブ首長国連邦の火星探査機「Hope」を搭載しての打ち上げ成功は、まだ記憶に新しいものと思います。
H2Aは42回打ち上げて41回成功。また、改良機のH2B型は9回の打ち上げが全て成功しており、日本の宇宙技術は世界から信頼されるに足るレベルにあると言えます。
日本のロケット打ち上げ成功率は98%、30回連続で成功 ── 12月9日に注目|Yahoo!ニュース 2016.12.1
ゴダートも、ツィオルコフスキーも、フォン・ブラウンも、コロリョフも、糸川英夫も、周囲の無理解や技術の壁にぶつかりながらも、宇宙への道を諦めませんでした。
彼ら先人がしてきた事は、まさに「トライ&エラー」の繰り返し。
「失敗は成功の母」の精神無くして挑戦はあり得ず、挑戦無くして進歩はあり得ない。
進歩の恩恵を日々どこかで享受している私たちには、それを生み出す為に日々どこかで挑戦している人々への敬意が必要なのではないでしょうか。
【速報】打ち上げ「失敗は成功のもと」 H3ロケットで永岡文科相“失言”|FNNニュース 2023.2.17
「人生における失敗者の多くは、諦めた時にどれだけ成功に近づいていたかに、気づかなかった人たちである」
「成功する人は"思い通りにいかないことが起こるのは当たり前"という前提を持って挑戦している」
「成功の反対は失敗ではなく挑戦しないことである」
アメリカの大手電機メーカーGE(ゼネラル・エレクトリック)創業者・トーマス・エジソン
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GEが広島と長崎を焼き尽くしたマンハッタン計画に参加しており、大規模事故による負担に耐えうるよう設計されていなかった原子炉『マークI型』を福島第一原発向けに売りつけた会社である事は、また別のお話になります。
米GE製の福島原発原子炉、安全上の問題を35年前に指摘|ロイター通信 2011.3.16
原発元設計者が告白「原子炉構造に欠陥あり」|週刊朝日 2011.3.28