「どうして戦争をするの?」
「ロシアは悪者なの?」
「ウクライナは正義なの?」
小難しい地政学の本や軍事評論家の評論記事などもいいのですが、個人的には遠藤達哉氏の漫画『SPY×FAMILY』62話がとても秀逸な内容でお勧めです。
※作品を未読の方はネタバレ注意
主人公の過去編にあたるエピソードで、突然の戦禍に襲われた『普通の市民』がどう変わっていくのかが、3話にわたってとてもシンプルに描かれています。
開戦理由の真実など知る立場にない『木っ端市民』は、とりあえずプロパガンダを妄信するしかない哀しさ。
故郷や家族を奪われた『怒り』と云う当たり前の感覚に突き動かされながらも、『敵が(自分と同じ)人間に見えた』と云うやはり当たり前の感覚にほっとする。
敵の憎しみのみならず、味方の愚かさが大切なものを奪う事もある皮肉な因果。
戦争とは為政者や資本家や極一部の人間にしか利益にならない、多くの小市民にとって『世界一不毛な時間』である事が伝わる素晴らしい作劇だと思います。
そして、『無知』の『無力』さ『悪』さを知っても尚『子どもが泣かない世界』の為に進み続ける事を選んだ主人公にも希望が持てます。
少年ジャンプ+『SPY×FAMILY』62話|ジャンプbookストア ※2022年5月16日現在無料公開中
自国の平和を保つ為に他勢力同士を争わせる外交のエグさを暗喩している、伊藤計劃氏のSF小説『虐殺器官』もお勧めです。
「リアルから自分を守るためにフィクションが必要で、私たちはこのフィクションの中にある『守られているその世界』を現実だと思う事で、安心して生きていられる」
神林長平『ネコメンタリー・猫も杓子も』より
たかがフィクション、されどフィクション。
肝に命じておきましょう。