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この世界で私たちが生き残る方法

※2022-2-23 加筆

人は女に生まれるのではない、女になるのだ
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)『第二の性』より


フランスの哲学者にしてフェミニストの先駆者は、こう説きました。
しかし、持って生まれた身体機能は、私たちの人生を否応なく左右します。

美人と不美人の生涯賃金格差は2700万円。
容姿に1ドル費やして得られる収入は平均4セント。
生理痛による労働損失は4911億円。
仕事と育児の両立に不安がある女性は92.7%。

世の女性たちは生物学的に『女』であると云うだけで、生まれつきのハンデを負っているのです。

一方、男性も決して他人事ではありません。


ルックスによる生涯賃金格差は2700万円!残酷な真実!労働経済学の権威の試算|東洋経済 2015.6.2

「美しくなりたい」努力の"残酷"な費用対効果 労働経済学の権威が教える美の経済学|東洋経済2015.4.24

なぜ、外見で生涯年収が4760万増えるか 見た目「上位」の人は年収17%増|PRESIDENT 2016.5.2

生理痛による労働損失4911億円 我慢・放置はNG|日経xwoman 2018.03.15

生理の体調不良で経済的損失が年間6828億円 フェムテック先駆け「ルナルナ」運営会社が福利厚生制度で低用量ピル服薬を支援|WWD 2020.1.31

月経の体調不良、経済損失が年6828億円|日本経済新聞 2021.4.24

出産前でも仕事と育児の”両立不安”92.7% 「先輩を見て絶望的な気持ちに…」|東京新聞 2018.3.12


容姿による生涯年収格差はむしろ男性の方が厳しいと云う分析もあり、努力して『美人(※本来は男女共に使用する表現)』に近付こうとしても生まれつきの『美人』に勝てないと云う結果は男性もまた同じなのです。

しかし、です。
女性が『男性の真似』をして長時間労働をするよう求める事も、男性が『女性の真似』をして家事・育児に母性とやらを発揮するよう求める事も、本来の趣旨からは外れているような気がします。
どちらも、これまでの『昭和』…特に高度経済成長期の成功パターンが「生き方・働き方の正解はこれしかない」と云う固定概念となっているように見受けられます。
家庭でも会社でも、『組織』は役割の『分担』で回すもの。一人で抱え込もうとしてはいけない所も、そんな無理をすれば潰れてしまう所も一緒です。
今は『企業戦士×専業主婦』と云う『昭和』の分担から『多様性(※自分に合う選択肢)』と云う『令和』の分担に組み直す時代に来ているのではないでしょうか。

仕事(※収入)・家事・育児の『新たな分担』は、実は男性にこそ多くのメリットをもたらします。
まず、これまで男性ばかりにのしかかっていた長時間労働から解放されます。
次に、家事能力が身に付くので離婚や老後で独り身になっても生活が回せます。
そして、パートナーや子供と多くの時間を共有する事で絆が深まり、家庭内に自分の居場所が出来ます。

今の時代に適合した『新たな分担』は、決して女性優遇ではない。むしろ、男女双方のQ.O.L(=Quality of Life)を上げる事になる。その第一歩であり一里塚であると個人的に思います。
生活の質を上げる事は、人生の満足度を上げる事に大きく貢献するはずです。
男と女と云う生まれつきの違いをあげつらうより、生まれつきの特徴を活かして補い合ってこそ、共に良き人生を歩む事が出来るのではないでしょうか。

そして、未来を生きる子供たちには是非『本物』の教育で『ほんとうのこと』に触れてほしいと思います。

個人的な体験談になりますが、子供の頃の私はブルーベリージャムが嫌いでした。
給食で初めて食べたブルーベリージャムの絵具のような味と臭いに拒否反応を起こしたからです。
数年経って、親に連れて行かれたアフタヌーンティーで出たブルーベリージャムの瑞々しい甘さに、同じ食べ物とは思えない感動を味わい、今では好物の一つになっています。
この話しから伝えたい事は二つあります。
子供にとっては、たった一度の体験が大人のそれよりもずっと大きな意味を持つと云う事。
たとえ子供といえども、『本物』と『紛い物』を見分ける感覚は持っている事。
「子供だから」と間に合わせの『紛い物』ではなく、この世にはこんな素晴らしい世界があるのだと心を豊かにする『本物』を与える教育が広く為される事を願って止みません。

知的能力を伸ばすなら良い成績をとることがいじめの理由にならない学校や集団を選ぶこと、芸術的才能を伸ばしたければ風変わりでも笑い者にされたり仲間はずれにされない環境が必要。
橘玲『言ってはいけない』より


著書自体は専門家ではない作家が書いているので多少割り引いて評価する必要があるかとは思いますが、著者の言わんとする所はわかるような気がします。

スヌーピーが言うように、「配られたカードで勝負するしかない」のが人生です。
初期条件を最初から存在しないもののように無視しても、生まれつきの能力は何一つ変わりません。
それどころか、せっかく授かった特徴と正面から向き合わなければ、長所を伸ばして短所をカバーすると云った対処方法さえ編み出せません。

「人は見た目より中身が大事」「人生の価値はお金で決まらない」「努力は必ず報われる」「人は生まれながらに平等」
これらを間に受けたまま成長してしまったとしたら、挫折した時は間違いなく必要以上に傷付きますし、就職活動は全滅するでしょう。
甘い嘘は、いつか必ず綻ぶが故に残酷です。
そんな実社会と掛け離れた『嘘』を教えて、わざわざ子供の人生観を歪めるのは大人として罪深い事だと思います。

子供たちには、『本物』の教育で『ほんとうのこと』に触れてほしい。
『あたたかいもの』や『やさしいもの』そして『美しいもの』を惜しみなく与え、それらを守る為にはどう戦う術があるのかを同時に教えていく事は、決して不可能ではないはずです。
美人と不美人。男と女。能力の高い・低い。
これら生まれつきだけでは終わらせない『教育の力』を信じたいです。

その為にも、学校は部外者を嫌う閉鎖性を一刻も早く捨てるべきではないでしょうか。
ただでさえ人手不足の教員に雑用まで押し付けていては、モラハラ・バワハラ等で事件を起こした前科がある者まで再雇用せざるを得なくなり、教員の質の低下が止まらない現状であるのは言うまでもありません。
受付・事務等は専門の事務員やパート職員を、体育や運動部の指導にはプロのコーチを、音楽や美術の指導にもプロの音楽家や芸術家を…と云うように、外部の専門職を積極的に起用していく事は英語の外国人教師の事例もあるので、決して不可能ではないはずです。
学生時代はお世辞にも偏差値の高くない公立校だったので、社会経験者やその道のプロが授業をしてくれないものかと夢想していました。
文部科学省は5兆9,118億円(※令和三年概算要求)もの予算を、次世代の人材(『社畜』や『奴隷』に非ず)が育つようにもっと有効に振り分けて欲しい。

人類史が始まって以来、累計で1080億人もの人々がこの地上で生きて死んでいきました。
彼ら先人の文字通り命を賭した生き方から、現代の私たちが学べる事はたくさんあるはずです。
矛盾と理不尽に満ちたこの世界で私たちが生き残る方法を作り出し、世に広めて伝えていく。
その為には、持てる者と持たざる者が不幸自慢に終始せず、互いの悩みを社会の問題として分かち合う事。
そんな現代の英知に、大いに期待したい所です。