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頑張っても報われないと云う人は頑張った人に報いているか?

日本資本主義の父・渋沢栄一の半生を描く、NHK大河ドラマ『青天を衝け』。
郵便制度の父・前島密のエピソードが、郵便制度150周年の年に放送されると云う粋な巡り合わせとなりました。
「マエジマ・ヒソカって誰?」と云う人も、「一円切手の人」と言われればピンとくるはず。

2020年2月頃の朝日新聞の『声』欄に、その一円切手のデザインに関する投書がありました。
それには

「失礼ですが、いかめしい顔のおじさんの切手を貼ると、何だかテンションが下がってしまいます」
「他の切手と組み合わせて貼った時に、氏のいかめしい顔つきがどうにも違和感を伴います」
※一部抜粋


とあり、とても「手紙が好き」と自負される方の発言とは信じられませんでした。
こちらこそ大変失礼ですが、お好きだと仰る手紙を支えている郵政制度に対してあまりにも無知かと存じます。

そんな「一円切手の人」が、NHKのドラマの登場人物として全国放送された事は個人的に嬉しかったです。
世に多大なる功績を残した人は、社会から評価されて然るべきでしょう。
先の偉人を称賛(※盲信ではない)する事は、次の偉人を生み出す動機となり得るからです。
お金や切手など、人々の目に留まる公的な発行物のモチーフに功労者を起用する事も、顕彰の一つの形として優れていると思います。

でも、「ぽすくま」も可愛くて好きですよ!
歴史あるモチーフと、親しみやすいモチーフ。二つのデザインを共存させてくれた日本郵政の英断に拍手です。


「いかめしい顔つきが」ゆるキャラの1円切手も販売へ|朝日新聞(藤田知也) 2021.1.28

70年ぶり新1円切手「ぽすくま」起用、4月発売―日本郵便|時事通信 2021.01.28

郵政創業150年の歩み|日本郵政(公式)


ここから、少し余談。
太平洋戦争で一回国を潰しているのに、戦後になっても“御一新”史観がなかなか見直されず、司馬遼太郎ほどの人までもが昭和を『鬼胎の時代』とこき下ろして明治を必要以上に持ち上げる有様…。小説上の演出に、氏の思い出補正もかかっているとは云え、影響が大き過ぎます。
根拠を欠いた『成功体験』は百害あって一利無し。
曲がりなりにも公的な実務をこなしてきた旧幕臣や、在野の識者たち。読み書き・算盤、街道、飛脚、座、先物相場…。江戸時代と云う長く平和な時代に培われてきた「基盤」があったからこそ、近代日本は失敗国家にならずに済んだ側面もあるのではないでしょうか。
それらを碌に教えもしない、公教育における一般教養の貧弱さは、将来に国を傾ける罪深いものと愚考する次第です。

偉人のみならず、慎ましくも日々の働きを積み重ねている一般人も、身近な人から評価される事で日々の苦労も報われると云うもの。
ブラック企業、ブラック労働を是正する働き方改革が叫ばれる昨今。
私たちは、私たちが暮らす社会を作ってくれた過去の人を正当に評価していますか?
私たちは、私たちが暮らす社会をより良くしようと働く人を正当に評価していますか?
「頑張っても報われない」と云う人は、遠いどこかで、或いは、ほんの身近で、頑張った人の成果に報いていますか?