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地獄への道は「善意」で造られていく

※2015-11-22(02:37)初出記事を改題・加筆


多忙により、とうとう二年近くも更新出来ませんでした…。
面目次第も御座いません。orz

云いたい事、書きたい事は本当にたくさんあるのですが、とりあえずは「今、一番熱い」雑感を書き留めておきます。


今年一月からテロに襲われ続けているフランス。
またしても、パリで悲劇が起きてしまいました。


11月13日。多くのパリ市民が金曜日の夜を楽しんでいたであろう21時過ぎ。(※現地時間)
1月7日に襲撃された風刺新聞社「シャルリー・エブド」も社屋を構える11区では、喫茶店「ラ・ベル・エキップ」香港出身の中華系アメリカ人が経営する日本料理店「スシ・マキ」付近で武装グループBが銃を発砲し、レストラン「ル・コントワール・ボルテール」ではテラス席の客を巻き込んでの自爆攻撃が発生。
10区のカンボジア料理店「ル・プティ・カンボージュ」バー「ル・カリオン・バー」、および19区のピザ店「ラ・カーザ・ノストラ」「カフェ・ボン・ビエール」付近でも相次いで無差別に発砲。
アメリカのロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル」がライブ中だったバタクラン劇場では、押し入った武装グループCが観客を人質にとって立てこもり、突入したRAID(※フランス国家警察特別介入部隊)との銃撃戦に。
そして、パリ郊外サン・ドニのスタジアム「スタッド・ド・フランス」では、フランス対ドイツのサッカー親善試合の最中にグールプAの三度にわたる時間差自爆攻撃。
一夜にして132人もの犠牲者が出る大惨事となりました。(後日、仏政府は「130人」に訂正すると発表)

オランド大統領は過激派組織「IS(Islamic States)」による犯行と断定し、間もなく「IS」側も犯行声明を発信。
民間人に対する卑劣なテロ攻撃に対し、当然のように各国が非難を表明。
日本の東京タワーを始め、エッフェル塔に倣って世界各地がランドマークをトリコロールに染める行動で「フランスとの連帯(Solidarite)」を示しました。

しかし、ほぼ同時期に起きたレバノンの首都ベイルート南部(※ヒズボラの拠点地域)の爆弾テロや、ナイジェリア北部の都市ヨラとカノでの少女を使った連続自爆テロについては、ほとんど報道されていません。(翌14日午後に起きたTGV脱線事故も…。)
この西側メディアの扱いの差に、疑問の声が上がっています。


フランス人の死は、レバノン人よりも重要なのか? 同時多発テロが招いた議論/ハフィントンポスト(2015年11月17日)

ナイジェリア連続爆発、死者46人に/CNN.co.jp(2015年11月19日)

11歳ナビラさん:米無人機「無実の人攻撃」訴えに来日/毎日新聞(2015.11.15)


タリバンの被害者であるマララさんは称えられるのに、米軍の被害者であるナビラさんは西側マスメディアに無視される現実。
国際機関であるはずの国連(※1)そのものが「連合国(※2)とその他オマケの寄合」に過ぎない現状では、アメリカの都合の良し悪し一つでその人物・出来事への扱いは雲泥の差となってしまう一面があるのです。

※1 第二次世界大戦における戦勝五ヶ国は、1942年1月1日を以て「同盟国(Allies of World War II)」から「連合国(United Nations) 」と名乗った。「連合国」も「国際連合」も英語名は"United Nations"。

※2 アメリカ合衆国、グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国(=イギリス)、ソビエト連邦、フランス共和国、中華民国(=国民党・現在の台湾)



犠牲者への哀悼の意を示す事。
突然の悲劇に襲われ傷付いた人に心だけでも寄り添いたいと祈る事。
それ自体は、人間としての自然な感情であり、純粋に善意から湧き上がる気持ちでしょう。

その「気持ち」の表現が、ある人はフェイスブックのプロフィールアイコンにトリコロールをかぶせる事だったり、またある人はフランスに関連する組織が主催する慰霊の集会に参加する事だったりするだけ。
日本を含めた西側の先進国と関わりが深い「国際都市・パリ」でテロが起きた事への世界の反応は、「近しい人や見知った人の死には涙を流せるが、縁も所縁もない他人の死には何を感じるでもない」ような、これもまた人間臭い感覚の発露ではないかと思います。

また、キリスト教徒とイスラム教徒の対立・ヒズボラとイスラエルの紛争などを抱えるレバノン、過激派武装組織ボコ・ハラムによる蛮行が絶えないナイジェリアなど、治安の悪さが常態化した国では「テロ」が国際社会に与えるインパクトはどうしても小さなものになってしまうのでしょう。
犯罪多発地域での凶悪事件は「あぁ、またか」と思えても、同じ事件が閑静な高級住宅街などで起きれば「物騒になったのではないか」と感じてしまう。そんな感覚に似ているような気がします。

しかし、その「人間として自然な」感情、そして「善意」が形成した世論の波は、歴史上(特に近代史において)何度も悲劇の引き金を引いてきました。

かつてドイツは、第一次世界大戦で敗戦国となりました。
戦禍によって都市は灰燼に帰し、戦場にされた農村も荒廃。戦勝国による賠償金の取立ては、ドイツ経済の生命線とも云える工業地帯ルール地方へのフランス軍・ベルギー軍進駐という脅迫的なものでした。(※米国政府を通して英・仏などに戦費を貸し付けていたモルガン財閥が、パリ講和条約会議の裏で返済を催促した為)
そんな時、ミュンヘンからある政治家が立候補しました。「彼」は「労働者の味方」を名乗り、高速道路を始めとするインフラ建設の公共事業による景気回復を公約しました。
疲弊し切った祖国を苦境から脱したい一心で、国民は未来への希望を託して「彼」に投票しました。
そんな「民主的な」選挙で首相に選ばれた「彼」の政党は、「国民社会主義ドイツ労働者党」――またの名を「ナチス」。
敗戦のどん底から「今日より少しでも良い明日を…」と望んだ国民によって、ドイツは「彼」を――「アドルフ・ヒトラー」を選んでしまったのです。

地獄への道は善き意図をもって舗装されている
カール・マルクス著『資本論』 第1巻第3編第5章第2節「価値増殖過程」より


原文は、「生産せずとも金銭を回すだけで資本家が富を生み出す行為」(※トマ・ピケティ著『21世紀の資本』でも「r>g」として指摘された)を揶揄したものなのですが…。


仏当局、劇場襲撃情報を8月入手 端緒生かせず/共同通信(2015年11月21日)

パリ同時多発テロを戦争へと誘導する未確認情報の不気味/ニューズウィーク(2015年11月18日)


ノンフィクション『戦争広告代理店』(高木徹:著)でも書かれたように、戦争を望むのは「国民世論」であるのですが、大抵その「世論」は利権集団と結託したマスメディアによって「意図的に作り出された」偽りの声に過ぎないのです。

言い換えれば、戦争を望む利権集団がメディアを使って、国民が「戦争やむなし」と思い込むような情報を恣意的に見せている…という構造。

大企業が商品を売りたければ、巨額の費用でCMを出し、時にはサクラも含む人員を動員してでもPRに努めるように。
「軍需産業」が「武器」を売りたいが為に、巨額の費用で「敵」に不利なニュースのみを繰り返し流し、自陣に有利な解説をしてくれるライターやコメンテーターを雇い、反対派を時にはスキャンダルをでっち上げてでも追い落とし、己のみの利益をさも国民の利益になるかのようにPRする。
当世のヤクザが鉄砲玉より弁護士を雇うように、二十一世紀の「死の商人」は国民を「共犯」に仕立て上げる情報操作の術をも持ち合わせた非常に厄介な存在に肥大化していたようです。

そんな「死の商人」たる軍需産業のオフィスや工場、彼らを資金源とする政治家や官僚の関係先、議事堂や国防省などの政府機関、そして軍事基地といった「戦争の中枢」を担っているはずの場所は、「何故か」無傷のままという不思議…。


パリのデモ行進でイスラエルに消された女性政治家達/NEVERまとめ(palezioさん)
※1月のパリの各国首脳によるデモ行進は厳重警備の中で"演出"されていた事を伝える記事

Photoshop捏造合成で内戦になってしまったシリア/NEVERまとめ(palezioさん)
※イラク戦争における「大量破壊兵器疑惑」「ニジェール・ウラン密輸疑惑」のごときアメリカによるプロパガンダ

イスラム国「過激主義との戦い」が複雑になった理由/NEVERまとめ(palezioさん)より 結論部分を抜粋
※「何故、戦争はなくならないの?」という疑問に対する答えの一端。つまりは「儲かるから」です。


さらに踏み込んだ情報を発信する人たちも…。


パリ同時多発テロが起きるほどにIS膨張を許した戦犯は誰か?/週刊ダイヤモンド・オンライン(北野幸伯)
※佐藤優氏のようなロシア通の国際関係アナリストの書き手で、東側や第三世界の視点を持った論点は一読の価値あり

欧米はテロの被害者か?/長周新聞(コラム)
※テロの被害者個人はともかくとして、フランスという国家や共犯関係にある欧米西側諸国が中東・アフリカ・アジアで繰り返してきた軍事介入は忘れてはいけない前提情報

戦争にウソはつきものである フランス編/街の弁護士日記(個人ブログ)
※空母「シャルル・ド・ゴール」追加派遣などフランスの対応が"あまりにも準備が良すぎる"疑惑について

パリ同時多発テロ事件は偽旗の疑い(まとめ)/ほんとうがいちばん(個人ブログ)
※ソースが外国サイトなので日本語解説付きのこちらをリンク


たとえ微力でも、何もしないままで終わりたくはない。
たとえ冷血漢と罵られても、恐怖や怨嗟に操られたくはない。
どんな結果が待ち受けていようと、後悔だけはしたくないから。


ダライラマ、パリ同時多発テロでコメント「神に祈っても問題は解決しない」/businessnewsline

「君の負けだ」 犠牲者遺族のメッセージ、共感呼ぶ/産経ニュース(2015.11.20)

パリ同時多発テロに向き合う20代「祈ってパリを想う前に、世界でなにが起きているかを知り、どうすれば解決できるか考えていかないと」/コスモポリタン By Manami Nemoto(2016.2.18) ※2016.2.18追記


最後に…
この度のテロで犠牲になられた方々…
そして、今も世界の何処かで、人として大切なものを理不尽に奪われている全ての人々に…
心から哀悼の意を捧げます。