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その勲章に相応しき者

去る2013年7月9日。
東京電力株式会社元執行役員にして福島第一原子力発電所所長として、日本史上最悪の原発事故収束作業を指揮した吉田 昌郎(よしだ まさお)氏が亡くなりました。
享年58歳。死因は食道癌だと発表されました。

まずはここに、ご冥福をお祈りします。

事故対応の激務から体調不良が囁かれていた頃、4号機燃料プールの補強工事の指揮中に会社の人間ドックで食道癌が発見され、2011年11月24日に入院。
巷では、外部からの原発内への調査や取材、公への証言に躊躇いがなかった吉田氏をマスコミから遠ざける為の軟禁ではないか?との憶測も飛び交いました。
その後、12月1日付で病気療養を理由に所長職を退任。本店の原子力・立地本部事務委嘱の執行役員に変更。
東京電力によると、吉田氏の被曝線量は累計約70ミリシーベルト。
米山公啓聖マリアンナ医科大学医学部第二内科元助教授は、原因を職責などからくる極度のストレスである可能性を指摘。(ゲンダイネット2013/7/10)
こうなってしまっては、当分、真相は闇の中でしょう。

生前、吉田氏を含む所謂「フクシマ50」に国民栄誉賞を贈るべきだ、という意見がネットで散見されました。
スペインからはアストゥリアス皇太子賞平和部門を贈られているのに、彼らが文字通り身を挺して守ろうとした故郷である日本から未だに何の栄誉も受けられないのは、やはり東電を始めとする原子力ムラが事故の負の遺産全てを彼ら末端に被せて葬り去りたいからなのか?と邪推してしまいます。
しかも、高線量化の作業員は子供を持たない年配者から当たる事が原子力業界の常識にも関わらず、「フクシマ50」の中には汚染水で被爆した関電工の社員2人のような20代30代の若者が、危険な現場で被爆させられていた実態も各メディアで報道されていました。
事故の当事者とその原因が、政府や中央官庁や半官半民会社にある以上、こういった「形」で功労者への謝辞を示す事もまた必要な態度ではないでしょうか。

イラク戦争で使用した劣化ウラン弾で、味方の兵までもを被爆させておきながら、訴えを無視する米国防総省の如く。東電も作業員の被曝量を改竄したり、健康や今後の雇用への保障を踏み倒している場合ではありません。
政府や経産省も、大金さえ詰めば人身も人心もいくらでも買い叩けるとばかりに、事故総括も被害補償も安全対策も無視した再稼働・海外輸出など思い上がりも甚だしい。(原発輸出先候補のインドとは日本製原発の過酷事故時は製造元たる日本が保証、つまり日本の税金でインドの被害を支払うと約束)

勿論、吉田氏をただ英雄視するつもりはありません。
例えば、2008年に福島第一原発に10メートルを超える津波が来る可能性が試算された時、吉田氏は原子力設備管理部の部長でした。
当然のように、原発設備を統括する本店の原子力設備管理部は「現実にはあり得ない」と試算結果を一蹴。結果、建屋や重要機器への浸水を防ぐ対策は何ら講じられませんでした。
しかし、これらを含めた原子力技術者としての自身の責任を生前の吉田氏は公然と認めていました。
そしてそれは、現場に残って原発事故の収束指揮を執り続けた事で、結果的に償われた側面もあるように思えます。

吉田氏は、病床でも自伝を執筆しようとしたり、取材に答えて当事者としての証言を残す事にも最期まで意欲的だったといいます。
国民が共有すべき情報だったであろう彼の貴重な証言が墓の下まで持って行かれてしまい、事実を知りたかった一人としては至極残念でなりません。

吉田氏の功罪を公正に見直す事。
これが、氏への一番の供養になると共に、東電を始めとした原子力ムラの本性をより深く知る事にも繋がる筈です。
原発事故の被害者や被曝し続ける作業員を救済しようともせず、使用済み核燃料や除染で出た核のゴミの後始末もせず、安全を真面目に確保しようともせず、地震国で原発を動かし続ける異様な組織の本性が…。

「フクシマの英雄たち」にスペインのアストゥリアス皇太子賞 / APF(BB News内)
吉田昌郎前所長について、伝えられていないこと / カレイドスコープ(個人ブログ 内)
激白!吉田昌郎 福島第一原発前所長「私のがんはステージⅢ」「福島の人たちへのサポートを死ぬまでしていきたい」 / 現代ビジネス
「余命3カ月」のウソ / 近藤誠(amazon内本紹介)
※内容全ての鵜呑みは要注意ですが、医師と製薬会社の癒着を暴露し、日本の薬信仰を指摘するなど、月並みながん治療観に一石を投じるユニークな著書

そして懲りない原子力ムラの所業↓
政府、被曝量の自己管理を提案 「除染完了」説明会で / 朝日新聞2013_6_29(記事全文と解説を掲載された個人ブログはこちら)
元むつ市長側に金銭支援 西松建設、核燃施設巡り1億円 / 朝日新聞2013_7_17
伊方原発の県審査委員に寄付 原発業界09年~12年度 / 朝日新聞2013_7_17

それでも頑張る現場組↓
福島第一原発事故、現場勤務で死亡は6人、東電社長の葬儀出席ゼロ / オルタナ編集部2012_1_25
【 福島第一原発の現場が崩壊する! – 不足する緊急作業員 】 / 星の金貨プロジェクト(個人ブログ 内)
東北電力原町火力発電所、震災から復旧の奇跡 / アゴラ言論プラットホーム2013_5_9