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TPPは大企業帝国主義への第一歩なのか?

※2013/7/14-17:32初出記事に加筆

2013年5月末日、市民グループ「TPPに反対する人々の運動」は『TPPをとめる!5.30国際シンポジウム─韓米FTA・NAFTAからの警告』と題したシンポジウムを開催。
19年前にアメリカとNAFTAを締結したメキシコ、そもそもTPPを最初に立ち上げていたニュージーランド、米韓FTAを締結した韓国から、それぞれゲストが招かれました。

その中の一人、メキシコの労働組合活動者でTPPに関するフォーラムを組織したマリ・カルメン・リャマス・モンテス氏はこう訴えました。
「メキシコは2012年にTPP交渉に参加している。TPPはNAFTA(北米自由貿易協定)よりも悪い結果が待ち受けているだろう。日本には、メキシコの苦い経験から学んでほしい」
アメリカ(とその傀儡のWTO)主導の自由貿易協定(FTA)が市民・労働者・農民にもたらしたものは、「食糧権の喪失」だったというのです。
氏によれば、メキシコはこの20年の間に、主食のトウモロコシが国内から無くなり、農家が激減するという最悪の事態に陥りました。

何故、そのような事態を招いたのか?
モンテス氏はこう明かします。
「メキシコ政府は、外国人投資家を招くため、自国民の労働賃金を下げた。NAFTAの発効(1994年)以前は、1人の労働者が1日4時間働くことで、一家を食べさせることができた。しかし、2000年以降、1日8時間働くか、2人で働かなければ、同じだけの食料が買えなくなった。それ以降も状況は悪化し、2012年には3人の働き手が必要になった」
つまり、政府は外資の投資を引きつける為に、国内労働者の低賃金雇用を促進させ、福利厚生や労働環境の安全整備を切り捨てたのです。

また、「食の主権」の問題も深刻化。
メキシコは、NAFTA発効から7年で輸出国から輸入国に転じました。それは、5億8100万ドルの食料黒字国から、21億8100万ドルの赤字国に転落してしまったという事です。
NAFTAで輸入関税を撤廃して以降、主食のトウモロコシを外国から輸入する業者は大きな利益を上げた一方、国産トウモロコシなどの穀物輸出は減少し、1800万人の農家が打撃を受けたと云います。
その結果、農村部の貧困化から仕事を求めて男性が単身で出稼ぎすることも多く、女性のみが取り残されたコミュニティが増加。
また、投資家が政府を訴えることができるISD条項によって、これまでに20億ドル以上の損害賠償をメキシコ政府は税金から支払っているのです。
モンテス氏は、こう続けます。
「日本にはNAFTAから学んでほしい。NAFTAによって『賃金増加と福祉創出』を約束すると政府は言ったが、反対だった。この現実を考えてほしい」

ニュージーランドのオークランド大学教授であるケルシー教授は、昨年に交渉参加したカナダとメキシコが「それまでの協議で合意した内容については、一切の変更・再交渉ができない」と突きつけられた例を挙げ、
「安倍首相は『今動けば、リーダーシップを発揮できる』と話したというが、実際には、日本の加入は降伏宣言にほかならない
と警告。

丁度、フローマン米通商代表部(USTR)代表が7月18日の下院歳入委員会でした通商政策についての証言が、教授の言葉を裏付けています。
TPP交渉で
「(一度決まった交渉文書の)再交渉も、蒸し返すことも日本に認めない」
と、日本が23日に正式参加しても交渉を年内妥結の目標を遅らせない考えを強調。
日本から「コメなどの農産品で関税撤廃の例外を求める声」が出ている事について、
「事前には、いかなる例外も認めていない。日本はすべての品目を交渉対象とすることに同意していることが重要だ」
と、安倍政権が「確保出来る」と公言した筈の『聖域』なんて「無いよ」とアメリカの側が断言しています。(読売新聞2013/7/18)
それどころか、当のアメリカの方が米製自動車の関税猶予などという『聖域』を「事前交渉」で要求する始末です。(ダイヤモンド・オンライン)
この「事前交渉」という案件は、TPP交渉とは全く関係のない日米二国間だけの経済協定であり、全くの別件である筈の「事前交渉」をアメリカ有利に呑めば、TPP交渉が日本有利になるかのようにアメリカが嘯いている、かなりの曲者です。

こんな報道も見つけました。
フローマン米通商代表部(USTR)代表が、インドで米企業が差別されていると主張し、差別的政策を改善するようインドに要請。
これに対し、チダムバラム印財務相は、「ビジネス競争」を両国の良好な関係の妨げにしてはならないと発言。
さらに、米上院で可決した移民法の条項は、インドのIT技術労働者が米国での短期滞在ビザを取得しにくくするとの懸念を表明しました。(ロイター2013/7/12)
つまりアメリカは、
「インドでアメリカ資本が儲からないのは『差別』だ!アメリカ資本が儲かるように国の政策を変えろ!」
と要求しているのです。
対してインドは、
「それならアメリカ議会が通した移民法だって、インド人IT技術者のビザを取りにくくするものなんだから、そっちこそ『差別』じゃないの?」
「だいたい、(スポーツ競技に政治対立を持ち込まないのがルールなように)ビジネス上の競争を国際関係に持ち込まないでくれる?」
と反論している訳です。
どう考えても、アメリカの言い分の方が分が悪いと思えるのですが…。

かつて自分で決めた「資本主義」「自由貿易」というルールを他国に押し付けておきながら、他国がそのルールを研究して競争力を付けてくると手のひらを返し、「うちが競争で勝てないのは、そっちの所為だ」と言い掛かりをつけてくるのが、今のアメリカ財閥系資本と彼らの傀儡に成り下がったワシントンの政治家の姿に見えて仕方ありません。
これで「自由」で「公平」な「競争」とは、甚だ片腹痛いというものです。

ケルシー教授の訴えに話を戻せば、教授曰く、アメリカがTPPを推進する理由は2つの戦略があるからだと指摘しています。
1つは、軍事的存在感の発揮。イラクやアフガンから軍を撤退させ、沖縄のように、アジア地域全体で軍を維持することが目的。
2つ目は、経済・産業的な目的。アメリカ企業のために、アメリカが策定した規則を、TPP参加国すべてに適用することが狙い。
やはり、これは世界最強の軍事力を傘にきた『アメリカの、アメリカによる、アメリカの為の、アメリカが優位なブロック経済圏』と云えないでしょうか。

米韓FTAの発効から1年が過ぎた韓国からは、弁護士・金鐘佑(キム・ジョンウ)氏が
「これまで韓国政府は、ISD条項が発生する可能性はゼロだ、と国内に向けて説明してきた。しかし、去年、すでにISDの事例が発生している。」
と、2012年11月22日アメリカ投資ファンドのローンスターが、外換銀行の売却の過程で「韓国政府が承認を遅らせたことで損害を受けた」として国際投資紛争解決センター(ICSID)に韓国政府を提訴した現状を報告。
金氏は、国際投資紛争解決センターが「国内の裁判所ではなく、外国人によって作られた、外国人の裁判官で構成される、外国にある裁判所」であり、ここが「問題を解決することになっている」ものの、果たして公正な判断が下されるのか疑問だと危惧します。
「地域には、それぞれの特殊性や公共性がある。このようなやり方で決められるのか?」
「ISD条項が発生する事態は100%起き得ない」と国民に話してきた韓国政府は、今度は「ICSIDで勝つ可能性は120%だ」と国民向けに言っているそうです。
こんな韓国政府の二枚舌を、金氏は批判します。
「法律の体系、法制度の根幹を揺るがす問題。これは、その国の主権、民主主義への真っ向からの挑戦である」
TPPが破壊するのは、経済でもなく、農業でもなく、国の主権と民主主義である、というのが金氏の主張です。
「みなさんに問いたい。『TPPに入って、主権、民主主義を投げ出すのか』と」

NAFTAと米韓FTA下で進行する被害。協定を乗っ取られたニュージーランドからの警告。
同じ地球上で起こっているこれらの事実を我が事のように重く受け止められなければ、私たち99%の生命・財産・未来の全ては1%の特権階級に奪われていくでしょう。

その1%の中核たるグローバル企業の思惑と資金力は、既に国家のそれを超えてしまった。(『レイヤー化する世界』佐々木俊尚)
TPPで利潤を得る『アメリカ』は、『アメリカ発かアメリカに拠点を置くグローバル企業』であり、『アメリカ人』ではない。
グローバル企業にとっては、アメリカの一般国民さえも搾取の対象でしかないのです。
彼らアメリカ国民もまた、収入による教育格差、高額な民間医療保険、収入に見合わない住宅ローン、借金を前提にした生活の果てのカード破産など、人権と財産を奪い取られています。(『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果)

南北戦争前夜のアメリカ南部で1人あたり4万ドル程(※現在の額に換算)だった奴隷の平均価格は、21世紀の現代において90ドル程にまで急落しているといいます。(『世界を見る目が変わる50の事実』ジェシカ・ウィリアムズ)
古代ギリシャやローマ帝国以来の奴隷制下では、奴隷は一切の自由を剥奪されていたものの、満足に働けるだけの衣食住は最低限保障されていたし、ローマ帝国では建前上とはいえ奴隷の虐待は禁じられていた。
翻って現代、発展途上国どころか、先進国でさえも若者や貧困層が「安価な労働力」として日々「使い捨て」られている現状は、目を覆うばかりです。
日本でも、派遣社員や日雇い労働者、インターン制度や外国人研修生制度などの非正規雇用が拡大し、それらの制度を悪用して人命・人権が次から次へと安く使い捨てられていく。
ある意味において、私たちは古代や19世紀の奴隷制の頃より酷い時代に生きているとも云えるのではないでしょうか。

シンポジウムの最後に、TPPを考える国民会議の代表・山田正彦元衆議院議員は、こう締めくくりました。
「やはり、ここは戦うだけ戦おう。国が壊れるような、島がなくなるような、そんなことにはしたくない。みんなで力を合わせ、韓国、メキシコとも国際的に連帯しながら、戦おう」

ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に滅茶苦茶にされている / ジェーン・ケルシー教授の仙台公演まとめ記事(個人ブログ内)
「日本のTPP加入は降伏宣言にほかならない」 ~TPPをとめる!5.30国際シンポジウム 米韓FTA・NAFTAからの警告 / インディペンデント・ウェブ・ジャーナル

山田正彦(元農水大臣):TPPは農業だけの問題ではない! ── 日本は米国の51番目の州になる / ニュース・スパイラル
TPPが民主主義を破壊する! / 著:苫米地秀人(ドクター苫米地ブログ内 本紹介)

「国民の代表のくせに何故私達が嫌がることや、私達の命と健康と安全を脅かすことばかり彼らはするのだろうか」 / 橋本久美氏(生活の党)のツイートと反応(阿修羅♪ 内)