世界的通貨安競争が止まりません。
自国の通貨の価値が上がって滅んだ国はありませんが、価値が下がって滅んだ国は数多あります。
「通貨の価値」とは、是即ち「発行国の信用」と同義語だからです。
韓国はウォン安を武器に、家電や自動車等の輸出産業で大きな売り上げを出しました。
が、サムスンを始めとする韓国を代表する企業内では、長時間労働と低賃金に耐えかねた労働闘争が激化しました。
ドイツはギリシア危機に端を発したユーロ安に乗って、自動車輸出を大きく伸ばしました。
が、生産拠点は東欧等の低賃金の労働力で賄われる海外工場なので、ドイツ国内の雇用が回復した訳ではありませんでした。
当の日本では、為替操作(まぁ、他国でもやっている事ですが)とも云える円安で大手自動車メーカー等の輸出企業が莫大な利益を出したものの、当然の如く輸入品であるエネルギー資源(石炭、石油、天然ガス等)や食料(小麦、大豆、外食産業向け食材等)は相対的に値上がりし、震災の影響もあって31年振りの貿易赤字に転落しました。
物価を上昇させよう(つまりインフレ)と云いながら、大企業の海外移転黙認やTPPで安い輸入品を入れようとする(つまりデフレ)。
国内で失業者が溢れているのに、移民を入れようとする。
企業の力の源たる技術やノウハウの蓄積を妨げかねない解雇規制緩和をしようとする。
これを「アベコベミクス」と云わずに何と云えば良いのでしょう。
国内の雇用が無い、所謂「空洞化」が進む一因は、企業が工場等を次々と海外へ移転しているからです。
例えば、同じ自動車会社が新工場を作るとして、国内に作った場合は多少なりとも国内にお金が落ちますが(まぁ、低賃金の外国人労働者を入れてしまうかもしれませんが)、海外に作った場合は工場という資産そのものも含めてお金が落ちるのは現地です(勿論、進出先の現地法人化は日系企業の良い所でもあるのですが)。
ここで、国内のお金を使って海外で商品を作り、その商品を国内で売ってさらに国内のお金を使わせ、その儲けを内部留保するという構図が浮かび上がってきます。
つまり、お金の行きつく先は、予算不足だと嘯く国でも、生活苦になりつつある消費者でも、低賃金で働く労働者でもなく、大企業の懐だという事がわかります。
極論に達してしまえば、日本のお金が海外進出という名のマネーロンダリングを経て、大企業にせっせと集められているようにも見えないでしょうか。(これはアメリカやEU等にも当てはまる話です)
日本は、所謂「失われた20年」の間でさえ貿易黒字続きだったというのに、賃金は下がる一方でした。
政府の云う「物価が下がるから賃金が下がる」のではなく、「賃金が下がるから(購買力が下がって低価格品しか買えなくなり)物価が下がる」のが実態なのではないでしょうか。
原因と結果をすり替えて、国民の生活を無理に締め上げれば、更なる購買力の低下を招き、税収も減る事は想像に難くありません。結果的には、税金で運営する国も損をする事くらい予想出来そうなものですが…。
揚句に消費税還元セール禁止令まで出る始末。下請けや仕入れ先の正当な利益を保護する目的なら、現在の公正取引法を適用すれば済む話です。
これでは、自由市場どころか統制経済です。安倍政権の言っている事は矛盾しています。
国が庶民の生活にまで細々と口出しする制度のどこが「自由主義」なのでしょうか。
それとも、やはり政権の云う「自由」とは「力(権力・財力・暴力)ある者の好き勝手」を自由にするという魂胆なのでしょうか。
2013/07/14 (Sun) 17:24