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もう一つの利権

阪神淡路大震災(村山政権当時)では、神戸市内だけでも15基の焼却場を増設し、瓦礫は3年で処理されました。
その前例からでしょうか。
環境省は「岩手は普段の11年分、宮城は19年分ある。目標の『三年以内の処理』には広域協力が不可欠」という期限を付けました。

阪神大震災の瓦礫は2000万トンで、
東日本大震災の瓦礫は2300万トン。(環境省資料)

被災地の範囲だけを比べれば、東北の方がずっと広く、決して手に負えないような量の瓦礫ではない筈です。
にも関わらず、震災から1年経っても全瓦礫の6%程度しか処理出来ていないそうです。

実際、当の被災地からは首長が「休止中の焼却炉の再稼動と仮設炉建設の許可を出して欲しい」と国に要請していました。(南相馬市は去年5月から要請しているが環境省は無視)
地元で施設を建設し、地元で処理すれば、国から建設補助金や処理費用も出て雇用にもなるからです。
にも関わらず、国や環境省は「広域処理」の掛け声の下、多額の輸送費(東京へ1t当たり1万5千円)を費やして岩手から57万トン、宮城から344万トンの瓦礫を県外へ搬出しました。(朝日新聞2012/5/19)
第一、テレビや新聞で「復興の妨げ」として頻繁に映し出される瓦礫の山は、既に街中にはありません。[写真]
今はその殆どが、沿岸部の仮置き場に移動・保管されています。

瓦礫受け入れを表明した自治体の一つ、静岡県島田市の桜井勝郎市長は、「桜井資源株式会社」という産廃処理会社の元代表。(現在は親族の桜井洋一氏)
同じく、瓦礫を受け入れ処理した東京都の処理請負先は、「東京臨海リサイクルパワー」という、よりにもよって東電の子会社でした。
当の被災地でも、「処理速度を上げる為」という理由で大手業者による巨大分別プラントが稼働しており、処理期限を伸ばせば地元業者の雇用になった筈の仕事を大手が取ってしまった形になっています。
それに、こういった巨大施設の類は、必要な時期を過ぎてしまえば持て余すだけの無用のハコモノになってしまいます。
地元が要望していた小規模の仮設炉を多数作れば、その後の維持管理も解体も容易になり、無駄も少なくなった筈です。

原子力ムラの如き瓦礫処理利権を隠蔽する為に、「(瓦礫処理が追いつかない)東北を他県が助けよう」という美談に論点がすり替えられていた…と言うのが実情のようです。

岩手県田野畑村の村長は「ゆっくり地元で処理し、雇用や経済に貢献してほしい」と希望していました。
福島県南相馬市の市長は、防波堤造成の為に地元で出た瓦礫だけでは足りないので他県の瓦礫も受け入れたいと去年の5月から要請していました。
液状化被害に見舞われた千葉県浦安市でも、震災瓦礫で沿岸部を埋め立て「第二の山下公園にしたい(※横浜市の山下公園は関東大震災の瓦礫で埋め立てられた)」と公園造成を国に提案しています。(産経新聞2012/6/5)
ですが、県や国に仕切られた現状では、現地事情を最も肌で感じている筈の首長の意向が反映される余地がなく、被災地の経済復興に何ら助けになっていないといいます。

国際生態系センター長の宮脇昭氏は、瓦礫の広域処理は不要であり、燃やしたり移動する方が環境汚染を広げるとの見方を示しています。
また、津波の被害を受けた東北地方沿岸300kmに亘って木質とコンクリ片をミックスした上に土盛をした幅10m・高さ20mの土手を築き、植樹して根を張られば有効な防波堤になるが、その為には今の瓦礫量では足りないくらいだとしています。(産経新聞2012/6/15)

「痛みを皆で分かち合おう」という「善意」を掲げて進められている広域処理が、受け入れ先に空騒ぎを起こし、被災地からは雇用を奪い被災者をさらに追い詰めているのだとしたら…
ひとえに、メディアの実態に基づいた報道の不足、そして私達一人一人の情報と認識の不足を今一度反省しなければならないのかもしれません。

岩手県陸前高田市長・戸羽太 / サイゾー
岩手県岩泉町長・伊達勝身 / 朝日新聞岩手版(元記事消滅により転載先ブログ)
岩手県民が強い不満「(広域処理方針のせいで)仕事が全くない地元の雇用に結びついていない」 / ブログ内
震災瓦礫が欲しいのに... 南相馬市長 / 報道ステーションSUNDAY(YouTube内 2:40~)