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再稼動をしたら、日本の経済は立ち行かなくなる

大企業の工場などの大口需要者は、「非常時には電源を切っても良い」という条件で電気料金の優遇を受けています。
であるなら、原発を止めた結果、真面目に節電しても電力供給が逼迫した場合、契約通り切らせて戴けば良いと思います。
そういう前提、そういうリスクと引き換えの大口値引きなのですから。

家庭向け電力が販売量の4割足らずなのに利益は7割を占め、企業向け電力は販売量の6割を占めるのに利益は僅かに3割です。(朝日新聞2012/5/29)
今回の値上げ要請は、本来企業が支払う分を家庭に支払わせるという、ただの経団連優遇策に見えてしまいます。(自宅に届いた東電からの「値上げのお願い」に「7月1日から」と書かれていた箇所が修正液で消されていたのには呆れました(^^;)
実際、企業向け電力は自由化されている為、電力会社と企業の「交渉」次第で料金を決められます。
仮定の話ですが、電力会社の株を買うから電気料金を安くしてもらう…といった「交渉」によって両者のもたれ合い構造が成り立ってしまう事もあり得るように思えてなりません。
また、経団連は法人税の実効税率を20%台に下げ、消費税率を19%まで引き上げるよう求めています。
これは正社員のパート化や派遣切りなどと同様、消費者の経済力しいては購買力を細らせ、自社製品の売り上げ不振のみならず、消費の落ち込みによる景気全体の低迷を招く自滅策だと、なぜ気付けないのでしょうか。

野田政権と経済界は異口同音に「原発を再稼動しなければ、日本の経済は立ち行かない」などと訴えます。
ですが、少なくとも自社のそれも上層部のみに入る目先の利益に飛びつき、日本経済全体、日本の将来を立て直す大事な時期に、協力する気のない経団連が言えた義理ではないと思います。

原発そのものの経済性も、決して良くない事が事故で判明しました。
故・高木仁三郎博士から「原発は本当に経済的なのか。それを総合的に研究してください」と頼まれた立命館大学の大島堅一教授の出した概算によると、原発を15年かけてやめると仮定すると、国全体で平均2兆6400億円の費用が浮くといいます。(2012/6/3朝日新聞-プロメテウスの罠・脱原発の攻防)
これは原発の運転費用、再処理費用、電源三法による巨額の交付金をなくせるからだそうです。
再生可能エネルギーが普及するまでは火力発電に頼るとして、その燃料費と再生可能エネルギー普及促進費用を年平均2兆円と計算。
つまり、単純計算しても、原発をやめれば差引き6千億円もの支出が減らせる可能性があるのです。
さらに、ただ原発を運転停止させるだけでは維持費がかかるので、火力発電の増設と燃料費の二重支出になってしまいます。
今のこの「再稼動待ち」状態が一番費用がかさむのであり、将来的に廃炉に向かっていけば、先程の試算にあるように結局は経済的なのです。
何より、原発そのものの保証期間はGE(ゼネラル・エレクトリック社)のマークIをして「せいぜい20年」。
どの道、老朽原発は順次廃炉にしていかなければ危険な上に不経済です。
それを「部品は定期的に交換されて」いるからと「(40年経っても)劣化しているとは断じがたい」などと、「60年(原則40年+例外的20年)廃炉」にさえ自民党(細田博之元官房長官)は性懲りもなく反対しています。(朝日新聞2012/6/13)
先頃のフランスの総選挙でも、原発推進派の保守系議員がフュッセンハイム原発を「部品が交換されているから老朽化しているとは言えない」などと嘯いていました。
核反応による高温・高圧に曝されて劣化し続ける肝心の原子炉が線量が高くて交換出来ないのですから、これらは全くの詭弁という他ありません。

安全より利権を優先した再稼動で喜ぶのは、日米仏の原子力ムラだけです。
昨年の国民投票で脱原発路線の継続を決めたイタリアの科学者及び環境保護団体で作るグループが、
「日本政府は海外に対し、福島第一原発事故を過小評価して見せている(フィレンツェ大学バラッカ物理学教授)」
と批判し、原発再稼動をやめるよう求めるメッセージを出しました。(朝日新聞2012/6/13)
他国にまで迷惑をかけた利権にメスを入れられない日本政府、日本製品の安全性への信頼低下の方が余程深刻です。
再稼動で得られる目先の利益より、失う将来の利益と信頼の方が遥かに大きい。
そんな算盤も弾けないのでは、経団連の商才もどれ程のものかと疑いざるを得ないと言えるでしょう。

再稼動という愚

大飯原発再稼動が、とうとう決定されてしまいました。

原子力規制庁は未発足(速くても可決は9月)、新たな安全基準も対策も、福島の事故原因究明も道半ば。
原子力事故被害への補償体制も整わず、現在被災した原発難民への救済策も汚染地域の除染も…何一つ出来ず終いの中での見切り発車。
野田政権は本当に財務省、経団連、そしてアメリカの言いなりのようです。
それまで自民党以上に原発を推進しながらも、事故を目にして考えを一部でも改めた管元首相や斑目委員長の方がまだ学習能力があると言えるでしょう。

原発事故対応は大失敗=管直人・前首相インタビュー= / 時事ドットコム

関電の八木社長は大飯再稼働を「夏季限定せず」「次の定期検査までの13ヶ月間、運転したい」と述べ、橋下徹大阪市長らが要望している夏季限定の運転に否定的な姿勢を示しました。(産経新聞2012/6/18)
「電力が不足するから原発を動かしたい」というのなら、不足する夏季に限定した運転で済む筈です。
いくら原発が単体では運用出来ない(大抵は揚水発電と抱き合わせ)、融通の利かない扱い辛い電源(火力のように強弱も調整出来ず、総発電量の六割を捨てている)とはいえ、電力不足が終わっても動かし続けらければならない理由は何なのでしょうか?
たとえ原発が停止しても、立地は「核燃料税」という形で停止中も交付金を受け取れる筈ですが…。

何より、大飯原発は事故発生時に必要な免震重要棟もベントフィルター塔も堤防もまだありません。
言うなれば、安全設備は事故を起こした「福島第一原発以下」という事になります。
それらが設置されるのは三年後。
であるならば、堤防建設中の浜岡原発同様、安全設備を整えた三年後にして初めて再稼動要請が出されて然るべきではないでしょうか。
それら安全対策をなし崩しにして、関電は再び原子の火を点けようとしているのです。

「もしも事故が起きたらどうするんですか?」と質問された関電の答えは「事故が起こらないようにします」。
まるで、目先の利益の為に安全を犠牲する体質のまま。
チェルノブイリに次ぐ過酷事故で国土が汚染された事など無かったかのような口振りです。
敦賀原発に続いて大飯原発直下にも活断層の存在が疑われている事への説明もなく(朝日新聞2012/6/9)、故・高木仁三郎博士が1995年に阪神大震災の教訓から原発が地震に襲われた場合の危険について訴えていた(2012/5/31朝日新聞「プロメテウスの罠-脱・原発の攻防」)事も全く考慮に入れて来なかった関電に「事故が起こらないようにします」と言われても、まるで説得力がありません。
おおい町の住民説明会でも、事故時の住民避難計画について地元には何ら説明がなかったというのですから、驚きを通り越して憤りさえ感じます。
つまり、関電と経団連の経営の為に原発を動かしておいて、いざ事故が起きたら住民は見捨てられると受け止められてもおかしくない姿勢です。

それだけでは飽き足らず、勢い付いた伊方原発や島根原発が次なる再稼動容認に手を上げ始めました。(毎日新聞2012/6/17)
さらに、日本原燃が高レベル放射性廃棄物処理の最終試験として青森県六ケ所村の再処理工場を動かすと発表。(産経新聞2012/6/18)
電力会社の株を多く持つ経済界は「原子力を基幹電源として維持し、電力会社の経営を助けたい」と言い、大手銀行までもが東電への新たな融資の条件を「電気料金の値上げと原発の再稼動」としたといいます。

つまり、この夏を去年の東日本のように原発無しで乗り切れたら、原発不要論が一層強まる。
それを恐れての「再稼動」強行ではないか、と京都大の植田和弘教授は指摘しています。(朝日新聞2012/6/2)

電力頼みの生活習慣・社会構造を否が応にも変えていく実践の機会を、再生可能エネルギーや自家発電の導入を促進させる好機を逸させれば、原子力ムラの思う壺でしょう。
第一、原発大国フランスの地方選挙でも焦点にされたように、原発は停止中も常にメンテが必要で、廃炉の為には何十年もの歳月と施設管理・解体工事によって、寧ろ雇用は増大します。
日本の原発の現場でも、事故以後に明るみに出た不正な就労への監視が強まった結果、人手不足になる発電所もあるくらいだそうです。

いずれにしても、植田教授の次の言葉が原子力行政の後ろ暗さを如実に語っていると思います。

「廃棄物の最終処分が出来ない技術は、生産の資格がない」

人の手で処分出来ないような資源は「資源」とは言えない(朝日新聞2012/6/18)と思います。
身の丈をわきまえず、扱いきれないとわかっているものに安易に手を出すのは、自滅の始まりに他なりません。

世界のウラン産出地に昔からある禁忌 / 2012.3.4放送回(YouTube内)

公共に仕え、公益に尽くすのが「公務員」

米軍機が空中測定した放射線拡散情報を保安院から受け取りながら、原子力災害対策本部と文科省は住民避難を指揮する官邸に届けなかった。(毎日新聞2012/6/18)
これは明らかな背任行為です。
SPEEDIの情報を官邸に明かさなかった事も含め、関係者には然るべき処分を下すべきでしょう。

公務員を始め、税金から給料をもらっている全ての職業(+学生)に言える事ですが…
どうか勘違いしないでいただきたい。税金は「収入」ではありません。
民間が稼いだお金から、国全体の安定的幸福の為に再分配してもらう分、つまりは「預り金」に過ぎないのです。
税金という公共のお金で生かされている(または育てられた)者は、公共の為になる仕事に努める義務があるのではないでしょうか。

これは銀行などの金融機関にも言える事です。
公的資金という名の税金をもらいながら、日本の産業を担う中小企業にはその資金を融資せず、損失の補填やギャンブルのような危うい投機に使ってしまうのでは、再分配になっていません。
リーマン・ショックやEU危機の問題にも共通しますが、公共のお金をもらいながら、公共に利益を還元出来ない所に大金を費やす必要が本当にあるのでしょうか。

東電も、値上げされる電気料金にボーナス資金を計上し、来年度から社員の年収を引き上げるといいます。(朝日新聞2012/6/6)
原発事故で飛散した放射性物質は最早「所有物ではない」から除染の義務がないと言い逃れ、事故で故郷も仕事も失って原発難民となった人々への補償も遅々として進まない。
福島一県のみならず、日本全体に放射能汚染とそれによる日本製品の信用低下という損害を与えておきながら、会社を破綻処理もせずに公的資金に頼り、資産売却も充分に行われず、役員・社員・株主が身を切って犠牲を償う姿勢も不十分。
今、方々から提訴されている電力会社ですが、原発事故で東京電力が巨額損失を出したのは歴代経営陣が地震や津波対策を怠ったためとして、株主42人が勝俣恒久会長ら新旧役員27人を相手どって総額5兆5025億円を会社に賠償するよう求めた株主代表訴訟を起こされました。
賠償額は、政府の第三者委員会が試算した13年3月末までの東電の損害額に廃炉費用を加えて算出したものだそうです。(毎日新聞2012/6/14)
株主訴訟の場合、会社側が敗訴すれば責任者の個人資産を以て賠償する義務が生じます。
本来ならば、それが社会的損害を出した側の「筋」というものではないでしょうか。
心ある、そして勇気ある株主の英断に、声援を送りたいと思います。

もう一つの利権

阪神淡路大震災(村山政権当時)では、神戸市内だけでも15基の焼却場を増設し、瓦礫は3年で処理されました。
その前例からでしょうか。
環境省は「岩手は普段の11年分、宮城は19年分ある。目標の『三年以内の処理』には広域協力が不可欠」という期限を付けました。

阪神大震災の瓦礫は2000万トンで、
東日本大震災の瓦礫は2300万トン。(環境省資料)

被災地の範囲だけを比べれば、東北の方がずっと広く、決して手に負えないような量の瓦礫ではない筈です。
にも関わらず、震災から1年経っても全瓦礫の6%程度しか処理出来ていないそうです。

実際、当の被災地からは首長が「休止中の焼却炉の再稼動と仮設炉建設の許可を出して欲しい」と国に要請していました。(南相馬市は去年5月から要請しているが環境省は無視)
地元で施設を建設し、地元で処理すれば、国から建設補助金や処理費用も出て雇用にもなるからです。
にも関わらず、国や環境省は「広域処理」の掛け声の下、多額の輸送費(東京へ1t当たり1万5千円)を費やして岩手から57万トン、宮城から344万トンの瓦礫を県外へ搬出しました。(朝日新聞2012/5/19)
第一、テレビや新聞で「復興の妨げ」として頻繁に映し出される瓦礫の山は、既に街中にはありません。[写真]
今はその殆どが、沿岸部の仮置き場に移動・保管されています。

瓦礫受け入れを表明した自治体の一つ、静岡県島田市の桜井勝郎市長は、「桜井資源株式会社」という産廃処理会社の元代表。(現在は親族の桜井洋一氏)
同じく、瓦礫を受け入れ処理した東京都の処理請負先は、「東京臨海リサイクルパワー」という、よりにもよって東電の子会社でした。
当の被災地でも、「処理速度を上げる為」という理由で大手業者による巨大分別プラントが稼働しており、処理期限を伸ばせば地元業者の雇用になった筈の仕事を大手が取ってしまった形になっています。
それに、こういった巨大施設の類は、必要な時期を過ぎてしまえば持て余すだけの無用のハコモノになってしまいます。
地元が要望していた小規模の仮設炉を多数作れば、その後の維持管理も解体も容易になり、無駄も少なくなった筈です。

原子力ムラの如き瓦礫処理利権を隠蔽する為に、「(瓦礫処理が追いつかない)東北を他県が助けよう」という美談に論点がすり替えられていた…と言うのが実情のようです。

岩手県田野畑村の村長は「ゆっくり地元で処理し、雇用や経済に貢献してほしい」と希望していました。
福島県南相馬市の市長は、防波堤造成の為に地元で出た瓦礫だけでは足りないので他県の瓦礫も受け入れたいと去年の5月から要請していました。
液状化被害に見舞われた千葉県浦安市でも、震災瓦礫で沿岸部を埋め立て「第二の山下公園にしたい(※横浜市の山下公園は関東大震災の瓦礫で埋め立てられた)」と公園造成を国に提案しています。(産経新聞2012/6/5)
ですが、県や国に仕切られた現状では、現地事情を最も肌で感じている筈の首長の意向が反映される余地がなく、被災地の経済復興に何ら助けになっていないといいます。

国際生態系センター長の宮脇昭氏は、瓦礫の広域処理は不要であり、燃やしたり移動する方が環境汚染を広げるとの見方を示しています。
また、津波の被害を受けた東北地方沿岸300kmに亘って木質とコンクリ片をミックスした上に土盛をした幅10m・高さ20mの土手を築き、植樹して根を張られば有効な防波堤になるが、その為には今の瓦礫量では足りないくらいだとしています。(産経新聞2012/6/15)

「痛みを皆で分かち合おう」という「善意」を掲げて進められている広域処理が、受け入れ先に空騒ぎを起こし、被災地からは雇用を奪い被災者をさらに追い詰めているのだとしたら…
ひとえに、メディアの実態に基づいた報道の不足、そして私達一人一人の情報と認識の不足を今一度反省しなければならないのかもしれません。

岩手県陸前高田市長・戸羽太 / サイゾー
岩手県岩泉町長・伊達勝身 / 朝日新聞岩手版(元記事消滅により転載先ブログ)
岩手県民が強い不満「(広域処理方針のせいで)仕事が全くない地元の雇用に結びついていない」 / ブログ内
震災瓦礫が欲しいのに... 南相馬市長 / 報道ステーションSUNDAY(YouTube内 2:40~)

もう一つの汚染

放射能汚染の報道に覆い隠され、忘れられている汚染が東北を蝕んでいます。
2011年4月以降、すっかり報道が沙汰止みになっている気仙沼の砒素を始めとする重金属汚染です。
水俣病の水銀やイタイイタイ病のカドミウムの例などでも知られているように、金属元素は農作物や水産物に蓄積・濃縮され、それを食べ続けた人間に深刻な健康被害を及ぼす可能性があります。
被災地には弱り目に祟り目で、もう本当にお気の毒としか言いようがありません。

自然重金属汚染の実態/東北大学大学院環境科学研究科によるPDF
化学物質の影響 東北地方太平洋沖地震と津波による汚染と除去/米国環境健康科学研究所(NIEHS)
【資料。瓦礫焼却は無理】東北沿岸の凄まじい重金属・化学物質汚染と、清掃工場の排ガス汚染距離が数km先/ブログ内

ただし、瓦礫処理に関しては汚染以前に、癒着している処理業者との利権が事の本質のようです。
次の記事に続きます。